化学業界は一般的に川上・川中・川下の3つに分類されることが多いのですが、この例えってわかりにくくないですか?
今回は化学業界の分類についてわかりやすく説明していきます。就活や転職活動を進める上で、業界を俯瞰してみることは非常に重要です。
皆様の志望企業探しの一助になれば幸いです。
時価総額Top 50の分類は?
当記事では川上・川中・川下をそれぞれ基礎原料・中間素材・最終製品という分類に言い換えています。
最終製品とは皆さんの目につく化粧品やプラスチック製品のことだと考えてください。
化学業界では石油や天然ガス、ケイ石などの天然資源から基礎原料をつくり、基礎原料を化学反応で中間素材に変換し、中間素材を組み合わせて最終製品をつくっています。
化学業界で時価総額Top 50の企業+αを各分類にわけると以下のようなイメージになります。
化学業界の川上:基礎原料とは?
当サイトでは『天然資源から製造される単純な有機分子や無機化合物』を基礎原料と定義しています。
単純な有機分子ってなんやねん!
と思われる方もいるかと思いますので発泡スチロールを例に説明します。
例:発泡スチロール 基礎原料編
発泡スチロールは大元をたどるとスチレンという有機化合物でできています。
このスチレンは石油などの天然資源から製造される基礎原料です。
スチレンのままだと最終製品として使用できないため、触媒(案内役)により重合反応(手を繋がせて)させて形を整えることで中間素材のポリスチレンビーズができます。
このビーズを特殊加工することで最終製品として私たちの手元に届くという流れで発泡スチロールが製造されています。
上記の手を繋いでいない、又は、手は繋いだけどぐちゃぐちゃの状態が単純な有機分子(=基礎原料)です。
また、単純な無機化合物とは、例えば、重曹(重炭酸ナトリウム)や塩(食塩)、アンモニア、窒素ガスや酸素ガスなどを言います。
基礎原料企業の特徴
基礎原料を製品として取り扱うことの問題点は、単純であるが故に純度などの点でしか他社との差別化が難しく一般的に利益率が低いことです。
そのため基礎原料だけを手掛ける企業は少なく、中間素材までを一貫して製造している企業が多いですね。
ただし、石油などの化石燃料からの脱却が課題となる現代では、バイオマス資源を活用する技術などを開発できれば他社との差別化が一気に可能となります。
代表的な企業:三菱瓦斯化学、日本酸素、トクヤマ、etc.
化学業界の川中:中間素材とは?
基礎原料を処理して最終原料の素材をつくるのが化学業界の川中:中間素材を担当する企業群です。
衣服の原料となる合成繊維、タイヤの原料となる合成ゴム、様々なプラスチック製品の原料となる合成樹脂、食料品の原料となる油脂などがイメージしやすいかと思います。
中には、塗料などの中間素材とも最終製品ともなる製品もあります。
さらっと書きましたが中間素材業態の鍵となるのは他社との差別化を可能にする『処理』技術です。
例:発泡スチロール 中間素材編
ここで先程のポリスチレンの例に戻りましょう。
ポリマー(基礎原料)では最終製品を製造しにくいため、加工しやすいようにビーズ(中間素材)にするのですが、ここでビーズが溶けやすい粒子径や均一性、独自配分の添加剤などの工夫があれば他社との差別化ができ、そのビーズは付加価値をつけて販売できます。
あくまでも例です!発泡スチロールのような単純な製品で他社との差別化はかなり厳しいと思いますのでご注意を。
他にも、タイヤの原料となる合成ゴムであれば添加剤や組成によりどれだけ耐摩耗性を付与できるかが重要になり、塗料であればどれだけ綺麗な色に発色するかや色が劣化しないかなどが重要になります。
中間素材企業の特徴
『処理』にどれだけ独自性や有用性を持たせられるかが中間素材企業の腕の見せ所です。
『処理』技術によって差別化が可能な中間素材企業は基礎原料と比べて利益率が高いのが特色といえるでしょう。
代表的な企業:JSR、日油、日東電工、ニフコ、etc.
化学業界の川下:最終製品とは?
最終製品を取り扱う企業とはいわゆるB to Cの企業です。
実際に、化学業界の川中で製造された中間素材は、自動車業界や製薬業界、家電業界など様々な分野で活躍しています。
化学業界にしぼっても時価総額Top 50の中でも、資生堂や花王など皆さんが普段から日常の中で慣れ親しんだ企業が多いかと思います。
最終製品企業の特長
これらの最終製品の企業も業種が化学である以上、中間素材企業と同様に独自の技術で付加価値をつけることを狙っていますが、それ以上に重要なのがブランド力です。
同じ効能をもつ化粧水が資生堂とよくわからない企業の2つから同じ価格で販売されていたらほとんどの方は資生堂の製品を買うのではないでしょうか?
そういった点では、最終製品企業は技術者が活躍できる場というよりはマーケターが活躍する分野といえるでしょう。
代表的な企業:資生堂、花王、ユニ・チャーム、 etc.
川上から川下までのすべての機能を備えた総合化学
時価総額Top 50の表をみると、基礎原料と中間素材と兼ねている企業や中間素材と最終製品を兼ねている企業がいるのがわかると思います。
総合化学といわれる企業は、更に広く、基礎原料と中間素材と最終製品をすべて自社内で完結させている企業です。
例えば、旭化成は基礎原料の製造もおこなっていますがサランラップなど最終製品も扱っています。
総合化学の特徴
企業規模が大きく知名度が高いのも総合化学の特徴であり、自社の最終製品に適した中間素材や、中間素材に適した基礎原料を生産することでシナジーを生み出せるのが強みです。
一方で、事業の寄せ集めになりかねないのが弱みであり、不採算事業を抱え込んでいる総合化学メーカーは少なくありません。
巨大であるがために高利益な事業に集中しにくいのは悩ましい問題です。
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まとめ
今回の記事では化学業界の分類を解説しましたがいかがでしたでしょうか?
一口に化学業界と言っても、化学業界のサステナ震源地となりえる基礎原料、技術力がものをいう中間素材、顧客と直接ビジネスができる最終製品など様々な顔があります。
ご自身の志望を今一度見つめなおすきっかけとなれば幸いです。
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