【志望動機例も掲載】決算データに基づく就活・転職に向けた資生堂株式会社の企業研究ノート

企業研究

当サイトにおける資生堂株式会社の評価は18.5/25点。化粧品業界の中でも総合力に優れる優秀な就職先候補です。

  • 年収は国内平均440万円の1.5倍
  • 日本市場に次ぐ柱として中国市場が育っている
  • 売上高は伸びていたがコロナの影響が大きい
  • 平均勤続年数は業界平均より短い
  • 残業時間は少なく、有給取得率は高水準

当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!

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年収などの基礎データ

まず基本となるデータを掲載します。残業時間が化学業界の平均値よりも少なく、ライフワークバランスがとりやすい会社に思えます。

また、平均勤続年数は11.3年と化学業界にしては短いですが、化粧品業界の中では勤続年数の長い企業です。

企業名資生堂
代表者名魚谷 雅彦
単独従業員数4309
連結従業員数39025
上場区分東証1部
本社東京
拠点掛川、大阪、久喜、那須、横浜
平均年収658.5万
平均年齢38.8歳
平均勤続年数11.3年
有給休暇の平均取得率70%
月平均所定外労働時間14.4時間
主業種/サブ業種化学/化粧品

事業内容と主力製品について

資生堂株式会社では事業概要を「ユニークなブランドや事業で、ビューティーカンパニーとして、新しい価値を生み出します」と定義しています。化粧品事業以外にもレストラン事業美容室事業教育事業保育事業などを手掛けていますが、各事業規模を見る限り化粧品事業に着目して研究を行えばいいでしょう。

化粧品事業

資生堂の主力事業はもちろん化粧品であり、「ビューティーで人々を幸せにする。その思いを商品へ。」をスローガンとして事業展開をおこなっています。

『ANESSA』『ELIXIR』『NARS』など言わずと知れた知名度の高いブランドを多数抱えている力強い事業です。

資生堂では購買接点タイプ別の5つのブランド(プレステージフレグランスコスメティクスパーソナルケアプロフェッショナル)と6つの地域(日本中国アジアパシフィック米州欧州トラベルリテール)で化粧品事業を区分しています。

購買接点タイプ別のブランド

  • プレステージ:デパートや化粧品専門店などでカウンセリングを通じて販売している高価格帯の化粧品およびフレグランス
  • コスメティクス:ドラッグストアや量販店を中心とした中価格帯の化粧品
  • プロフェッショナル:ヘアサロン向けのヘアケアやスタイリング商品

ちなみに、『UNO』『TSUBAKI』などのブランドを有するパーソナルケア事業はCVC Capital Partnerと合弁事業化するため、資生堂の持ち分法適用会社となります。

プレステージなどの高価格帯へと経営資源を集中する明確な経営姿勢ですね。

持ち分法適用会社とは?

持ち分法適用会社とは資生堂の株式保有率が20~50%の会社のことで、親となる会社は持ち分法適用会社の利益の一部を享受することができます。今回の場合は、資生堂がパーソナルケア事業の実質的な経営権をCVCに譲渡し、そこで得られた利益の一部を資生堂が受け取るというビジネススキームになります。この取引により、パーソナルケア事業に使っていた社内リソースを他の事業に使用することができます。

地域による区分

資生堂は決算を上記のブランド別ではなく、地域別に開示しています。

単純に各地域での業績を示していますが、トラベルリテールは免税店による業績を示しています。確かに空港内はブランドショップや化粧品店で溢れかえってますよね。

その他の事業

化粧品以外の事業としてはレストラン、美容室、教育、保育などの事業を行っています。

レストランは資生堂パーラーなどが話題ですね。利益を得るための事業というよりは、資生堂のブランド力や知名度を向上させるための事業と言えるでしょう。

また、教育といっても美容人材の教育であり、美容室事業と共に本業の化粧品事業の延長線にあるビジネスです。

保育は社員の共働きを応援する意図の事業であり、女性比率が高い資生堂らしい事業展開です。

経営理念について

資生堂株式会社HPより

経営理念

OUR MISSION IS BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD

化粧品企業らしい経営理念といえます。化学に分類される企業として、如何にINNOVATIONを起こせるかにも注目です。

売上高および営業利益の解析

色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。

売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。

連結売上高・営業利益の解析

資生堂株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。

『なんで10年も?』と思った方へ

資生堂の平均勤続年数が11.3年(入社したら平均11年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!

売上高は2011年から2019年まで右肩上がりで伸びており、資生堂には強い成長性を感じます

一方で、2020年業績はコロナ禍の影響を色濃く受けています。売上高の落ち幅はまだ許容範囲ですが、営業利益率はひどい低下具合です。

資生堂はもともと化粧品企業としては営業利益率が低く、業績のてこ入れには根本的な体質改善が必要になりそうです。

実際、新規工場の立ち上げによる生産性の向上、パーソナルケア事業の切り離し、在庫状況の改善など様々な施策を行うことを中期経営計画で発表しています。

2030年までに営業利益率を15%に改善する目標をたてており、達成するには上記の施策以外にも更なる工夫が必要に思えます。

セグメント別売上高の解析

分析のコツ

セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。

資生堂では製品や事業別の業績は開示しておらず、地域別の業績を開示しています。

グローバル企業のイメージが強い資生堂ですが、全社業績における国内事業の影響はかなり大きいです。2019年と比較して2020年の日本事業の売上および利益はガクッと落ちており、日本事業が景気動向に左右されやすいことがわかります。

特に、2020年に限れば中国事業やトラベルリテール事業よりも日本事業の利益の方が小さくなっています。

逆に、中国事業の成長性はすさまじく、コロナ禍においても売上高を伸ばしています。中国ではEC(ネット通販)の伸びが全体を押し上げてるようです。

また、空港利用者が減るため苦戦が予想されたトラベルリテール事業が2020年に優れた利益率を達成しているのはポジティブサプライズですね。

上記の分析から、売上高の割合が大きい国内事業を高利益化すること、中国を中心とした海外進出を積極的に行うことで、資生堂はまだまだ成長できるポテンシャルの高い企業という印象を受けました。

人口動態の観点からも積極的な海外進出は避けられないでしょう。

  • 日本事業の利益率の低さが全社成績の安定性を損なっている
  • 中国市場を中心とした海外進出により更に成長できるポテンシャルがある

研究開発費の推移

上図では資生堂の研究開発費の推移を示しました。

ここ5年間では右肩上がりに研究開発費が伸びていることがわかります。

とはいえ、他の化学系企業と比べると、研究開発費売上高比率は低めとなっています。

研究開発費に対する売上高が大きい(=コスパがいい)と捉えることもできますが、資生堂の営業利益率は決して高くないため、単純に研究開発よりもマーケティングの方が比重が高いために研究開発費売上高比が低いといえるでしょう。

循環型社会構築への取り組み

分析のコツ

サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。

資生堂はサステナビリティに関する目標を明確にしており、その達成時期もチャレンジングと言えます。

二酸化炭素だけをターゲットとする狭い目標とは異なり、水の消費量や原料の出処など世界基準の包括的な目標を定めている点も好印象です。

項目目標値達成時期
CO2排出量カーボンニュートラル2026年
パーム油サステナブルなパーム油2026年
サステナブルな紙100%
(認証紙・再生紙など)
2023年
水消費量 -40%2026年
廃棄物埋め立てゼロ2022年
容器包装100%サステナブルな容器2025年

一方で、『サステナブル』という単語がいまいち不明瞭なので、ずるい目標設定に感じないこともありません。ブランドイメージが大切な業種ではありますが、実のある対策を期待したいですね。

注目すべきプレスリリース3選(2021/01/01~2021/08/31)

分析のコツ

企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。

資生堂株式会社の注目すべきプレスリリースは、

  1. 資生堂、世界初 ノネナールが肌ダメージを引き起こすことを発見 (2021/03/31)
  2. 資生堂、イオンにて化粧品の使用済み容器回収を開始 (2021/06/01)
  3. 資生堂、循環型ショッピングプラットフォームLoopECサイト専用のリユース可能なスキンケア容器を開発 (2021/07/05)

1は資生堂の基礎研究の成果を発信するプレスリリースです。専門外の研究者からすると、化粧品会社がどのような研究を行っているか想像がつきにくいと思います。学術誌に掲載されるような研究を行っている例として取り上げました。

2と3はサステナブルな取り組みに関するプレスリリースです。2はいわば回収ステーションを設置するという話でリサイクルに貢献することに消費者観点ではメリットはありません。

一方で、3では容器を返却するとお金が返ってくるシステムなので、消費者としても積極的にリユースを意識するようになると期待できます。環境保全を意識した良い取り組みです。

競合他社は?

化学業界における分類(詳細は別記事参照)で化粧品業は最終製品群に振り分けられます。

化粧品業における大手競合としてはポーラ、コーセー、ノエビアなどが挙げられます。

プロフェッショナル事業で取り扱う理容製品ではミルボンが競合です。

また、健康食品で有名なファンケルも化粧品事業を展開しています。

資生堂の強み、弱みは?

就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。

資生堂の強み

資生堂の1番の強みは長い年月をかけて築き上げたブランドイメージでしょう。

化粧品業界に疎い私でさえ、化粧品No.1企業といえば資生堂を想像します。

他業種よりもブランドイメージが大切なビジネスであるため、資生堂ブランドは重要な資産と言えます。

海外やトラベルリテール事業など多様な販売網も魅力のひとつです。

特に、人口が多く、経済発展が著しい中国市場でのビジネスが軌道にのっているのは今後の発展に大きく寄与しそうです。

資生堂の強み

確固たるブランドイメージ、多様な販売網、海外事業の成長性、環境保全への積極的な取り組み

資生堂の弱み

国内事業のウェイトが大きく、その国内事業の利益率が低いことは資生堂の課題です。

資生堂はマーケティングコストが非常に高く、利益率を圧迫する要因となっています。一方で、ブランドイメージを保持するには必要な投資といえるでしょう。

米州や欧州での事業が赤字なのも気がかりです。

また、コロナ禍のような不況の場合、化粧品の需要が下がるため、業績がかなり落ちます。これは化粧品事業しか持たない資生堂の弱みといえます。

資生堂の弱み

マーケティングコストの高さ、国内事業のボラティリティ、米州や欧州での苦戦、化粧品一本足の事業構造

管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、

本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。  

例 企業理念×TRUST8

私の夢は『美』の実現により人々に活力を与えることであり、貴社であれば事業に貢献しつつ自身の目標も達成できると考えて入社を希望しました。現代社会において『美』の定義や価値観は多様化していますが、製品を通して消費者に活力を与える鍵、各『美』に対する共通の訴求点はブランドに対する信頼感だと思います。140年かけて確固たるブランドイメージを築き上げた貴社のDNAに触れ、BE OPENやCOLLABORATEに体現されるように風通しの良い貴社で業務に携われば貴社事業の発展に貢献できる人材へと成長できると存じます。(252字)

資生堂への志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。

経営理念:OUR MISSION IS BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD、CEOメッセージより『「美」は人を勇気づけ、明日の希望となる力 』、確固たるブランド力、ブランドイメージ、サステナビリティ、グローバル企業、OUR DNA、OUR PRINCIPALES (TRUST8)

これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。

まとめ

以上にまとめましたが、資生堂株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?

資生堂が築き上げたブランド力は非常に強力で、これからも化粧品業界の中心となる企業でしょう。

マーケティングに力を入れていることから、マーケター志望の方にはもちろんおすすめの就職・転職先候補となりそうです。

就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります。

今回、当記事で紹介した内容に加えて就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう。

オファー型サイトの自己分析テストは秀逸!上手に活用して内定を勝ち取ろう!おすすめのサイトはこちら

当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。

この記事を書いた人

博士号を取得後、アカデミックから逃げるように総合化学に就職した研究者。会社では新規事業の開発に従事している。入社後、社会勉強のために証券アナリスト資格を取得し、分析力をいかすため当サイト『化学業界解剖計画』の運営を開始した。

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