当サイトにおける昭和電工株式会社の評価は20.5/25点。本当はもっと高得点をつけたい面白い企業なのですが、買収がどちらに転ぶかわからないので控えめな得点となっています。
- 年収は国内平均440万円の1.8倍
- 石油化学事業と無機事業の二本柱だが共に変動率が高い
- 売上高は成長基調で、M&A効果も期待できる
- 平均勤続年数は業界平均よりも高水準
- 残業時間は他大手と比較しても少ない
当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!
年収などの基礎データ
まず基本となるデータを掲載します。平均年収が高く、残業時間も短いことから大手化学らしくワークライフバランスのとりやすい会社と言えますね。
企業名 | 昭和電工 |
代表者名 | 森川 宏平 |
単独従業員数 | 3515 |
連結従業員数 | 33684 |
上場区分 | 東証1部 |
本社 | 東京 |
拠点 | 千葉、川崎、秩父、 大分、伊勢崎、横浜、etc |
平均年収 | 794.6万円 |
平均年齢 | 40.2歳 |
平均勤続年数 | 16.3年 |
有給休暇の平均取得日数 | – |
月平均所定外労働時間 | 18.6時間 |
主業種/サブ業種 | 化学/総合化学 |
日立化成の買収について
昭和電工独自の話題として、日立化成(現:昭和電工マテリアルズ)の巨額買収が挙げられます。
本買収をネガティブに報道するメディアもありますが、昭和電工の『2030年に世界トップクラスの機能性化学メーカー』という目標を達成するためには必要な買収だったのではと個人的にはポジティブに捉えています。
ただ、昭和電工の年間売上高よりも大きな買収額となったので、財務悪化のリスクがあるのは否めないですね。
日立化成買収の意図は?
まず、昭和電工の長期目標が世界トップクラスの機能性化学メーカーだということを押さえておきましょう。
わざわざ機能性とつけているのは、一般的に薄利な石油化学事業に留まらず、素材に機能(付加価値)を付した製品を取り扱う高利益率事業を展開していく意思の表れと推察できます。
一方で、低収益事業は今後売却が進むと予想されます。事業戦略においても、2000億円程度の事業売却を予定していると明記されていたため、就職希望分野が売却対象でないかは要確認です。
次に、昭和電工HPで公開されている『統合新会社の長期ビジョン』の抜出をご覧ください。
上図からわかるように日立化成(現:昭和電工マテリアルズ)が主体となる部分はライフサイエンス、エレクトロニクス、モビリティなどです。
これらの分野は化学業界の中では高利益な事業であるため、昭和電工はこれらの事業分野において自社技術と日立化成の技術を融合することで成長を加速させることを狙っていると推測できます。
特に、昭和電工が研究開発費の多くを充てているエレクトロニクス分野と日立化成の強みであるライフサイエンス分野は今後の成長に期待できそうです。
現在の扱い
買収は完了したものの、日立化成は昭和電工と完全統合したわけではなく、昭和電工マテリアルズと社名は変えて実質的には存続しています。
今後は、2021年7月に実質統合(マネジメントの統合)を行い、2023年1月に法人格統合(=日立化成が昭和電工の一部になる)する計画です。
シナジーが発現するのはそのあとと予想され、2027年に完全統合を予定しているようです。
この記事では、昭和電工マテリアルズ(=日立化成)を昭和電工の1セグメントとして扱っています。
事業内容と主力製品について
昭和電工株式会社の事業内容は細かくセグメント分けされており、石油化学事業、化学品事業、無機事業、アルミニウム事業、エレクトロニクス事業と実質的に日立化成として動く昭和電工マテリアルズの6分野に大別されます。
石油化学事業
オレフィン部と有機化学品部から構成される石油化学事業は昭和電工の中核となる事業です。
次の紹介する化学品事業との違いがわかりにくいですが、石油化学事業では単純なモノマー(様々な製品の原料と考えていただければokです)を取り扱っています。
石油化学事業は市況の影響を受けやすく売上高や利益が安定しないため、如何に社内でこれらの原料を高付加価値品へと展開していくかが総合化学としての腕の見せ所と言えるでしょう。
『エチレン』などのオレフィン、『酢酸ビニル』、『アリルアルコール』などのモノマーが主力製品です。
化学品事業
化学品事業はさらに4つの事業部、産業ガス事業部、情報科学品事業部、基礎化学品事業部、機能性化学品事業で構成されています。
簡単に説明すると、石油化学よりも複雑な化合物や産業ガス、無機薬品等を取り扱っています。
廃プラスチックを原料とした環境調和型アンモニア『エコアン』を取り扱っているのも化学品事業の中の基礎化学品事業部ですね。
他の主力製品は、『次亜塩素酸ソーダ』、『クロロプレンゴム』、『アミノ酸(グリシン)』などが挙げられます。
無機事業
無機事業はセラミックス事業とカーボン事業から成り、『黒鉛電極』や積層セラミックコンデンサーの原料となる『酸化チタン』が主力製品です。
無機事業は売上高、営業利益が共に期待できる優秀な事業なのですが、特に黒鉛電極が市況に左右されやすいのは玉に瑕です。
主力事業である石油化学が景気に左右されやすい上、無機事業も振れ幅が大きいとなると好況時には映えて見えますが不況時の落ち込みも目立ちます。
今後、黒鉛電極を使用する高炉の保守・点検なども事業化していくようなので、(焼け石に水かもしれませんが)利益の安定化が期待できそうですね。
エレクトロニクス事業
その名の通り、当事業では『ハードディスク』や超高輝度・高出力LEDなどの『化合物半導体材料』、『リチウムイオン電池材料』などを取り扱っています。
また、『レアアース合金』なども取り扱っており、このように特殊な技術や品質管理が必要な分野は高い利益率が期待できるので特に成長に期待したい事業ですね。
実際に、昭和電工の研究開発費はエレクトロニクス事業に多く充てられる傾向があります。
アルミニウム事業
アルミニウム事業はアルミ圧延品事業、アルミ機能部材事業、アルミ缶事業から構成され、安定した収益をあげている事業部門と言えます。
しかしながら、成長力があるとは言えず、アルミ缶事業とアルミ圧延事業は事業整理の一環として売却されることが2021年6月時点で決定しています。
一方で、モビリティ部材などに展開しているアルミ機能部材事業は残すことから、昭和電工が機能性化学メーカーを目指していることが明確にわかりますね。
経営理念について
私たちは、社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品・サービスの提供により企業価値を高め、株主にご満足いただくと共に、国際社会の一員としての責任を果たし、その健全な発展に貢献します。
私たちはお客様の声を聴き、技術を磨くことで「こころ」を動かす製品やサービスを「社会」を動かすソリューションを提供します
経営理念は一般的と言えますが、「動かす」というメッセージは端的で面白いですね。
なにより志望動機にも組み込みやすいので要チェックです。
売上高および営業利益の分析
色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。
売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。
連結売上高・営業利益の分析
昭和電工株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。
昭和電工の平均勤続年数が16.3年(入社したら平均16年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!
2021年12月予想を考慮しなくても少しずつ売上高が成長しているように思えます。
ただ、2020年は昭和電工マテリアルズ(旧:日立化成)の売上を合算してこの業績なので、昭和電工マテリアルズを買収していなかったらガクッと落ちていましたね。
また、好況な2018、2019年では利益率が高かった一方で、買収費用が嵩んだとはいえ2020年の利益率はかなり低調です。
これらの要因について、次のセグメント別解析でみていきましょう。
セグメント別売上高の解析
セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。
まず、昭和電工マテリアルズの業績は今年だけしかデータがないので評価の対象外とします。
昭和電工は長年石油化学事業と化学品事業に支えられてきましたが、近年、無機事業が急激に業績を上げてきているのが見て取れます。
これは、黒鉛電極を扱う関連会社を子会社化した(簡単に言えば、昭和電工の業績として扱うように計算方法を変更した)からであり、事業の急激な成長があったわけではありませんので誤解しないように注意しましょう。
次に、2018、2019年のセグメント利益を見ると黒鉛電極が圧倒的な存在感だとわかります。2020年では一転赤字化するなど無機事業は市況の影響を多分に受けるビジネスモデルだと言えそうです。
従来より柱であった石油化学事業や化学品も市況の影響を受ける分野であるため、屋台骨がそろって安定していないというのは不安要素のひとつといえます。
世界中の工業が一斉に停止するような不況が今後起こるとは思えないので、黒鉛電極がここまで落ち込むことはこの先あまりないとは思いますが、昭和電工が目標に掲げる機能性化学メーカーとして地位を高めることで事業の安定性(=優位性)を高められるかに期待です。
安定性という観点では、日立化成のライフサイエンス事業が寄与しそうだなと期待できます。
- 売上高と利益共に市況に左右されやすいビジネスになっている
- 目標とする世界トップクラスの機能性化学メーカーへと歩む道は間違っていないように思える
- 日立化成の買収によりどのように事業が成長するか楽しみ
研究開発費の推移
上図では昭和電工の研究開発費の推移を示しました。
黄色で示したエレクトロニクス事業に多くの研究開発費を充てていることが見て取れますね。
現在はまだエレクトロニクス事業の売り上げや利益が全社業績に大きく貢献しているわけではないので、今後の成長に期待できそうです。
一方で、現在の昭和電工を支えているといっても過言ではない石油化学事業や無機事業には開発費をあまり充てていないのが印象的です。
利益率や安定性の高い高付加価値品へと主要事業をシフトしようとしているのがこの対比からも明確にわかりますね。
循環型社会構築への取り組み
サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。
昭和電工は総合化学大手の中でもサステナに対する感度が非常に高い企業です。
と言いますのも、他の企業が『環境調和な〇〇の研究を開始した』というプレスリリースを出す中で、昭和電工ではすでに廃プラスチックを原料とした『エコアン』事業を展開しているからです。
化学プロセスの商業化には10年以上の歳月がかかるのが珍しくないので、この先行者としての優位性は評価できます。
廃プラスチックを利用した水素製造など、今後様々な企業とコラボして事業を展開していくことが期待されます。
注目すべきプレスリリース3選(2020/01/01~2021/06/19)
企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。
昭和電工株式会社の注目すべきプレスリリースは、
- 人工知能(AI)の活用によりフレキシブル透明フィルム開発の迅速化を実証 (2020/04/13)
- 川崎市・昭和電工・日本マクドナルドで「プラスチック資源循環」実証事業開始 (2020/11/30)
- 統合新会社の長期ビジョン (2020/12/10)
まず1について、昭和電工は計算科学に力をいれている企業です。実験データが数字として整理されているという点でAIとのシナジーが大いに期待できそうです。『実証した』という点も評価できます。
2はサステナ関連のプレスリリースです。昭和電工は廃プラスチックを原料として水素やアンモニアを製造するエコ事業を行っています。
他社のサステナ事業と異なり、既にビジネスとして成立しているのがこの事業の非常に大きな強みです。
ちなみに、この廃プラスチックの原料化には宇部興産のEUP技術が使用されています。
3は昭和電工の長期方針を詳細に説明している資料なので志望者は必ずチェックするべきでしょう。
競合他社は?
世界シェア1位の黒鉛電極事業でいえば、グラフテックが競合といえそうです。
また、総合化学大手の三井化学、東ソー、住友化学、三菱ケミカルホールディングス、宇部興産あたりも比較対象として挙がるでしょう。
他にも、石油化学事業のアクリロニトリルでは旭化成が競合ですね。
昭和電工の強み、弱みは?
就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。
昭和電工の強み
昭和電工の一番の強みはオリジナリティあふれる製品群です。高輝度LEDや電池用カーボンナノファイバーなどオンリーワン・ナンバーワン製品は多くありますが、中でも黒鉛電極は昭和電工を代表する製品です。
昭和電工にしか製造できない製品は高い利益率も狙えるため、業績全体を支えることが期待できます。
また、廃プラスチックを原料にしたアンモニアである『エコアン』をすでに数十年操業しているように、サステナ関連事業に対する知識の蓄積が十分にあることも昭和電工の強みです。
日立化成の買収にも見られるように機能性化学企業を目指す明確な成長戦略も魅力的に思います。
オリジナリティ溢れる事業群、事業の多様性、サステナビリティ事業、明確な成長方針
昭和電工の弱み
連結業績の推移をみると明らかなように、昭和電工の一番の弱みは業績変動率の高さです。営業利益率が10%以上から赤字に転落するなどいまいち落ち着きのない動きが特徴です。
石油化学を中心とする他の総合化学も市況に影響されやすいのですが、昭和電工の変動性は悪い意味で群を抜いています。
また、日立化成の買収額は昭和電工の売上高よりも大きく、この買収により財務体質が悪化する懸念があると一般的には観られています。買収がうまくいくか(買収額以上の利益を昭和電工が得られるか)はまだわかりませんが、”失敗”となるリスクは弱みのひとつです。
事業のボラティリティ、巨額買収による財務体質の悪化
管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、
本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。
私は貴社のサステナビリティの対する取り組みに魅力を感じました。私には技術を通して環境に貢献するという夢があります。貴社の廃プラスチックを原料とした取り組みは国内化学メーカーの中で一歩抜きんでた存在だと存じており、このような独自技術を展開・発展させることで環境保全に貢献する仕事ができると期待しております。また、挑戦を推奨する文化が醸成された貴社であれば、次なる環境貢献事業の立ち上げられる人材へと成長できると存じます。(209字)
昭和電工への志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。
企業理念、コーポレート・メッセージ:動かす、世界トップクラスの機能性化学メーカー、グローバル企業、サステナビリティへの取り組み、独自の技術、成長性
これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。
まとめ
以上にまとめましたが、昭和電工株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?
環境保全に貢献できる化学プロセスを既に操業している点で、当該分野で他社よりも優位に立っていると言えます。
“環境保全”への意識が高い方や計算科学・AIへの興味が強い方には特におすすめの就職・転職先候補となりそうです。
さて、就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには競合よりも効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります。
今回、当記事で紹介した内容に加えて就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう。
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当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。
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