【志望動機例も掲載】決算データに基づく就活・転職に向けた三井化学株式会社の企業研究ノート

企業研究

当サイトにおける三井化学株式会社の評価は23.5/25点大手の中でも目を引く非常に優秀な就職先候補だと思います。

  • 年収は国内平均440万円の1.9倍
  • 基盤素材事業の影響が大きいが利益率が高く優れた安定性
  • 売上高の伸びはないが利益率の伸びが凄まじい
  • 平均勤続年数は業界平均よりも2年程度長い
  • 有給取得率が管理職でも高い

当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!

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年収などの基礎データ

まず基本となるデータを掲載します。平均年収の高さはもちろんのこと、勤続年数が業界平均よりも2年も長いことが目を引きますね。

勤続年数が長い=働きやすい会社といっても過言ではないので社員の満足度が高い会社と推測できます。

企業名三井化学
代表者名橋本修
単独従業員数4659
連結従業員数18051
上場区分東証1部
本社東京
拠点市原、茂原、名古屋、
大阪、岩国、大牟田
平均年収837.6万円
平均年齢41.0歳
平均勤続年数17.1年
有給休暇の平均取得率79%
月平均所定外労働時間
主業種/サブ業種化学/総合化学

事業内容と主力製品について

三井化学HPより

三井化学株式会社の事業内容はモビリティ事業フード&パッケージ事業ヘルスケア事業基盤素材事業の4分野に大別されます。

モビリティ事業

近年、三井化学の利益を支えているのはモビリティ事業であり、売上高が倍ほどある基盤素材事業よりも事業別利益が大きいという特徴があります。

モビリティ事業の中でも海外PPコンパウンドが主力であり、世界シェア2位、アジアシェア1位と確固たる地位を築いています。

ちなみに、PPコンパウンドとはポリプロピレン(PP)にエラストマーやタルクなどを複合化した高機能品です。

自動車部材というのは採用に非常に厳しい条件やテストがある分野であるため、モビリティ事業は今後も安定に推移しそうです。

フード&パッケージ事業

フード&パッケージ事業はコーティング・機能材包装用フィルム産業用フィルム・シート農業化学品が主力分野です。

この中でも高機能包装用シーラントはアジア1位、水稲系殺蟲剤は国内2位の製品です。

ヘルスケア事業

ヘルスケア事業では眼鏡レンズなどのビジョンケア材料、医療原薬などのパーソナルケア材料不織布歯科材料を取り扱っています。一般的に高付加価値・高利益な商品といえるでしょう。

中でも、プラスチックメガネレンズは世界1位の製品です。ヘルスケア分野は高い利益率だけでなく、不況時でも需要が落ちないのが魅力ですね。

基盤素材事業

基盤素材事業ではエチレンビスフェノールAなどのモノマーからポリプロピレンなどのポリマー・誘導品までを取り扱っています。

利益率が低く、不採算事業のように思われがちですが、上記の高利益事業の素材を製造する縁の下の力持ちです。

当事業のボラティリティを下げることを経営課題と捉えているようなので(2021.6 経営概況説明会より)、今後どのように事業が変革していくのか楽しみです。

個人的にはバイオナフサを導入することでどのようにビジネスを展開していくかに注目したいと考えています。

分析のコツ

ボラティリティとは変動の大きさ、この場合は事業の売り上げや利益のふり幅のことです。石油化学は基本的に需要が景気に左右される他、原材料である原油価格が大きく動くため事業利益がぶれやすいという特徴があります。

経営理念について

企業グループ理念

地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する

目指すべき企業グループ像

化学の力で社会課題を解決し、多様な価値の創造を通して持続的に成長し続ける企業グループ

大手企業らしい優等生な理念ですね。実際にカーボンニュートラルへは積極的に取り組んでいるように思います。

売上高および営業利益の分析

色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。

売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。

連結売上高・営業利益の分析

三井化学株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。

『なんで10年も?』と思った方へ

宇部興産の平均勤続年数が17.0年(入社したら平均17年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!

2012年から2021年の間では売上高は伸びていませんが、灰色ラインで示した営業利益率が劇的に向上していることがわかります。

もちろん売上高と利益率が同時に伸びることが理想的ですが、この規模の大企業でそれを達成するのは困難です。

経営説明会動画からは低利益事業を整理し、高利益事業にシフトする戦略をとっているように感じましたが、大きく売上高や利益を落とさずこれだけ利益率を伸ばせるのは凄いことです。

隠れ成長企業といっても差し支えありません。

この利益率を維持しながら、如何に売上高を伸ばしていくかが今後の課題ですね。

さらに2020、2021年のコロナ禍による不況においても利益率がそこまで落ちていないのは市況の影響を受けやすい化学業界としては優秀です。

事業の多角化によるアドバンテージと言えますね。

セグメント別売上高の分析

分析のコツ

セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。

三井化学のセグメント分析は売上高では真の姿が見えてこないため、セグメント別売上高に加えてセグメント別利益も示しました。

と言うのも、売上高が二倍以上ある基盤素材よりもモビリティの方が高い利益をあげているのです。

ただ、基盤素材事業の高利益化を経営陣が課題として捉えているようなので今後に期待です。

また、フード&パッケージやヘルスケア事業も売上高の割に利益への貢献度が非常に高いことがわかります。

これらの分野がコロナ禍という空前絶後の不況下においても順調に伸びているのは好印象ですね。

基盤素材やモビリティなどの市況の影響を受けやすい事業と、市況の影響を受けにくいヘルスケアなどの事業を組み合わせた事業の多角化が経営に安定さをもたらしている点にも注目です。

その他分野は赤字ですが、三井化学ではその他=新事業/次世代事業という位置付けなのでこの赤字は気にする必要はないです。

  • 売上高に伸びはないが利益の伸びが凄まじい
  • 今後、基盤素材事業の構造改革が期待される
  • ヘルスケアなどの高利益事業が今後の伸びを牽引すると予想される

研究開発費の推移

上図では三井化学の研究開発費の推移を示しました。

モビリティ事業とフード&パッケージ事業に研究開発費の多くを充てていることが見て取れます。

これらの事業は利益率が10%を超える高収益事業であるため、三井化学はこれらの事業を強化することで業績向上を狙っていることがわかります。

また、利益率の低い基盤素材事業に研究開発費を充てていないことはわかりますが、成長著しいヘルスケア事業にもあまり開発費を充てていないのは意外です。

ヘルスケア事業はコスパの良いビジネス展開をしているとも考えられますね。

循環型社会構築への取り組み

分析のコツ

サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。

三井化学は次の項目のプレスリリースからわかるように、地球環境に配慮することに対して高い感度を有する企業といえます。

特に、バイオナフサの導入は注目すべき事項です。ナフサからの展開は技術が完成されているため、このビジネスの成功の鍵は技術開発というよりも『ビジネスをどのように描くか』です。

他にもバイオ原料からのプロピレン合成など特色ある技術を保有しています。

環境関連事業に携われるチャンスが多い企業と推測できる

注目すべきプレスリリース3選(2020/01/01~2021/06/15)

分析のコツ

企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。

三井化学株式会社の注目すべきプレスリリースは、

  1. AIにより化学プラントの運転変更操作を40%効率化 (2020/11/16)
  2. BASFと三井化学、日本国内におけるケミカルリサイクルの推進に向けた協業検討を開始 (2021/06/01)
  3. 日本初、バイオマスナフサによるバイオマスプラスチック製造を開始します(2021/05/20)

製造業においてはAIを使用した運転制御によるオペレーションの効率化が共通の課題ですが、1のような実際に効果を得られたという事例は珍しいと思います。

このプレスリリースより新しい技術を積極的に取り入れる企業ということがわかります。

2と3は共にサステナビリティを意識したリリースです。超大手BASFとの協業はポジティブな効果が期待できそうですね。

競合他社は?

多くの事業を抱えるコングロマリットであるため、これといった競合相手はいませんが、総合化学大手の旭化成住友化学宇部興産東ソー昭和電工三菱ケミカルホールディングスあたりが比較対象でしょうか。

三井化学の強み、弱みは?

就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。

三井化学の強み

三井化学の強みは事業展開の方向性多様性です。現在の三井化学はモビリティ事業とフード&パッケージ事業に業績を支えられていますが、これらの製品は従来の基盤素材事業のマテリアルを用途に特化した形に加工したものであり、原料から製品を一貫して手掛ける総合化学のメリットを最大限活かした事業展開です。

低利益率の基盤素材(石油化学産業)を高利益な事業へと昇華させたこれらの事業は三井化学の最大の強みです。

サステナビリティに関する技術やビジネスも三井化学の強みです。化学産業界において石油原料からの脱却は至上命題ともいえるテーマです。

三井化学はバイオナフサの導入やプロピレンのバイオ化など様々な技術をもっており、今後どのような事業を立ち上げるのかにも注目です。

三井化学の強み

事業展開の方向性、事業の多様性、サステナ技術(ビジネス)、新技術を取り入れる姿勢、従業員満足度の高さ(=勤続年数の長さ)

三井化学の弱み

三井化学にはこれといった弱みを感じませんが、売上高の成長性の低さは欠点といえます。利益率を高めた10年間であったため、成長性の低さに目をつぶっても構いませんが気になります。

また、海外売上高比率が50%と化学大手として低いのも弱みのひとつです。

三井化学の弱み

海外売上高比率が低い、売上高の成長性の低さ

管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、

本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。

例 サステナビリティ×企業理念

私は貴社のサステナビリティの対する取り組みに研究者として魅力を感じました。私には研究を通して地球環境の保全に貢献できる仕事をするという夢があります。貴社の掲げる理念にあるように地球環境との調和を重んじる風土の貴社であれば、研究を通して地球環境の保全に貢献しつつ、かつ、化学の力で貴社の持続的な成長に貢献できる人材へと成長できると考えております。 (172字)

三井化学への志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。

企業グループ理念(地球環境との調和の中、革新と創出、広く社会に貢献する)、目指すべき企業グループ像(化学の力、社会課題、持続的に成長し続ける企業グループ)、グローバル企業、事業の多角化、高利益体質、AI(ディープラーニング)活用、サステナビリティへの取り組み

これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。

まとめ

以上にまとめましたが、三井株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?

総合化学大手の中でもバイオナフサやBASFとの協業など環境保全に対する取り組みに積極的な企業だと感じました。

“環境保全”への意識が高い方には特におすすめの就職・転職先候補となりそうです。

さて、就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには競合よりも効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります!

今回、当記事で紹介した内容に加えて就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう!

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当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。



この記事を書いた人

博士号を取得後、アカデミックから逃げるように総合化学に就職した研究者。会社では新規事業の開発に従事している。入社後、社会勉強のために証券アナリスト資格を取得し、分析力をいかすため当サイト『化学業界解剖計画』の運営を開始した。

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