【志望動機例も掲載】決算データに基づく就活・転職に向けたクラレ株式会社の企業研究ノート

企業研究

ご来訪ありがとうございます、『化学業界解剖計画』を運営する Jaga(@DrJagase)です。

合成繊維業界の大手であるクラレ株式会社の評価は20.5/25点。世界シェア一位の製品を多く有することが強みの優良企業です。

  • 年収は国内平均440万円の1.6倍
  • 利益率の高いビニルアセテート事業が収益の柱
  • ビニルアセテート事業に次ぐ第二の柱育成に期待
  • 平均勤続年数は業界平均よりも長い
  • 有給取得率が高い

当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!

スポンサーリンク

年収などの基礎データ

まず基本となるデータを掲載します。勤続年数の長さが目を引きます。従業員の満足度が高い企業であることが伺えます。

事業内容と主力製品について

クラレ株式会社の事業内容はビニルアセテート事業機能材料事業トレーディング事業繊維事業イソプレン事業の5分野に大別されます。

ビニルアセテート事業

ビニルアセテート事業は世界シェアNo.1製品やオンリーワン製品を多く抱えるクラレの柱となる事業です。

クラレHPより引用した下図から、酢酸ビニル(=ビニルアセテート)を種々の製品へと展開していることがわかります。単一の化学品からこれだけ強い製品群を構築できたのは凄いですね。

クラレ株式会社HPより

『ポバール樹脂』、光学用『ポバールフィルム』や洗濯洗剤に使用される水溶性『ポバールフィルム』、『エバール』『ビニロン』が世界ナンバーワンの製品です。

ビニルアセテート事業の高い利益率はシェアやオリジナリティが裏付けとなっています。

また、2014年には米デュポンよりビニルアセテート事業を買収することで事業を強化しています。

2021年決算説明会において、ビニルアセテート事業の更なる強化を目標に掲げていたので、今後も当事業がクラレの屋台骨となりそうです。

機能材料事業

機能材料事業では『メタクリル樹脂』やその加工品、『炭素材料』を取り扱っています。

2018年には活性炭最大手の米カルゴンカーボン社を買収し、『活性炭』は世界トップシェアの商品となっています。

買収後、売上は伸びていますが利益が伴っておらず、まだ買収によるポジティブな効果が表れているとは言えなさそうです。

個人的(投資家目線)には、当事業の利益率が伸長することでビニルアセテート事業に次ぐ柱となれば企業としての魅力が増すと考えています。

トレーディング事業

トレーディング事業では子会社であるクラレトレーディング株式会社がクラレグループの製品や他社製品の加工や販売を行っているようです。

詳細はわかりにくい事業構造ですが、機能材料事業と同程度の売上高を誇っています。

繊維事業

繊維事業では人工皮革『クラリーノ』やビニロンを取り扱っています。

『クラロンK-II』という製品名で販売されているビニロンは世界トップシェアです。

また、面ファスナーである『マジックテープ』を取り扱うのも当事業です。非常に知名度の高い製品を有していることに驚きです。

メモ

マジックテープはクラレの商標であり、一般名ではないのに驚きました。旭化成のサランラップなど商標が一般化するほどに広がる製品のブランド力は強力です。

イソプレン事業

ビニルアセテートと同様、イソプレンも化学品の名前であり、イソプレンを原料とする製品群を当事業では取り扱っています。

他にもファインケミカル、耐熱性ポリアミド樹脂『ジェネスタ』、熱可塑性エラストマー『せプトン』など多様なポートフォリオになっています。ジェネスタは世界トップの製品です。

クラレは各事業にオリジナリティの高い製品が多く、世界トップシェアの製品群が高い営業利益率を支えている

経営理念について

クラレグループの使命

私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。

ー世のため人ため、他人のやれないことをやるー

ありたい姿

”独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業”

クラレは独自性の高い事業を有する企業ですが、それがよくわかる理念を提唱しています。

ビジネスにおいて独自性は強い武器になるため、今後も『使命』に沿った成長を期待したいです。

売上高および営業利益の分析

色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。

売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。

連結売上高・営業利益の分析

クラレ株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。

『なんで10年も?』と思った方へ

クラレの平均勤続年数が17.7年(入社したら平均17年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!

2011年から2020年に向けて売上高が順調に伸びていることがわかります。

コロナ禍を受けた2019年と2020年は営業利益率が10%以下に落ち込んでいますが、成長期間に利益率が落ちていないことは非常にポジティブなことです。

*2019年、2020年も素材メーカーとしては優秀な営業利益率を維持できています。

カルゴンカーボンなどM&Aで売上高を伸ばしている側面はありますが、全社業績で営業利益率を落としていないということは質の高い成長をしているといえます。

セグメント別の分析

分析のコツ

セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。

セグメント別の売上高を見てみると、ビニルアセテート事業が圧倒的な首位事業であるとわかります。

次いで、機能材料事業とトレーディング事業が高い売上高をあげています。

機能材料が2017年から2018年にかけて売上高が伸ばしているのはカルゴンカーボン社を買収した影響であり自然な成長ではありません。

上記のように、売上高を観察すると、ビニルアセテート、トレーディング、機能材料の順で影響が大きいことがわかります。

セグメント別利益を観察すると、ビニルアセテートの一強状態が鮮明に見えてきます。

逆に、売上高の大きい機能材料事業やトレーディング事業は営業利益率が低いとわかります。

これらの弱点ともいえる事業が高収益化できればより強い企業体質となりそうです。

  • 売上高が順調に伸びており利益率も落ちていない
  • コロナ禍でも減収・減益幅が小さく安定性が高い
  • ビニルアセテート一本足の事業構造でリスクヘッジできるかは気がかり

研究開発費の推移

上図ではクラレの研究開発費の推移を示しました。

決算説明会ではビニルアセテート事業の更なる強化を課題として挙げていましたが、研究開発費の配分はそれほど偏っていません。

裏を返せば、研究開発費をさいている割に他事業の売上高や利益が伸びていないのは気になります。

ちなみに、『全社』では新規事業の立ち上げやコーポレート機能の強化などを行っています。

循環型社会構築への取り組み

分析のコツ

サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。

繊維や樹脂を取り扱う企業に求められる環境保全技術は、

  1. 素材のケミカルリサイクル(サーキュラーエコノミーの構築)
  2. バイオマス由来原料の活用(カーボンニュートラルへの取り組み)

の2種類に大別されます。このどちらも具体的な取り組みがクラレのポートフォリオには見当たらないため(子会社で小規模ではやられている)、少し環境保全への取り組みが物足りなく感じます。

クラレはオリジナリティを発揮するのが得意な企業なので環境保全技術でもオリジナリティが見えてくると面白いと思います。

注目すべきプレスリリース3選(2020/01/01~2021/08/07)

分析のコツ

企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。

クラレ株式会社の注目すべきプレスリリースは、

  1. 世界包装機構「ワールドスターアワード」の「プレジデントアワード(President’s Award)」部門銅賞を受賞 (2020/06/03)
  2. インターナルカーボンプライシング制度の導入について (2021/03/26)
  3. カルゴン・カーボン社の一部事業の売却について (2021/6/10)

1はバイオマス由来の生分解性ガスバリア材『PLANTIC』の関連製品が受賞したというプレスリリースです。バイオマス原料を活用すること、廃棄されたときの環境負荷が小さいことは今後の樹脂製品では必須の特徴になるので要チェックです。

2は設備投資をする際にコストや利益だけでなく、二酸化炭素排出量を考慮するという提案です。

3は買収したカルゴンカーボンの統合に関するリリースです。現状、クラレとのシナジーが見えにくいので事業を整理して利益をあげられる構造をつくりあげていく必要があります。

クラレの競合他社は?

繊維業界の競合は、帝人東レユニチカが挙げられます。

ほかにも総合化学の旭化成が繊維事業を有しています。

クラレの強み、弱みは?

就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。

クラレの強み

ビニルアセテート事業に代表されるように独自の製品群および技術をもっているのがクラレの化学企業としての一番の強みです。これらの製品群は他社が簡単にまねできるレベルにないため、今後も安定した業績をおさめるでしょう。

独自製品から生み出される売上は利益率が高いのも注目すべき特徴です。

さらに、海外売上高比は71% (2020年業績)とグローバルにビジネスを展開しているのは強みのひとつです。

クラレの強み

独自の製品群と技術、世界No.1製品を各事業に保有、安定した業績、高い利益率、グローバル企業

クラレの弱み

ビニルアセテート事業の一本足で業績をあげているのは気がかりです。もし、当該事業に不具合が生じた場合にどのようにリスクを分散させるのかが課題です。

環境保全技術についても具体的なビジネス展開が見えにくいため、市場のトレンドを踏まえると、より環境分野にちからをいれるべきと思われます。

クラレの弱み

ビニルアセテート事業に頼り切り、リスクヘッジ不足、環境保全ビジネスが不十分

管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、

本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。  

例 独自性×クラレの使命

私は貴社の独自性に強く惹かれたため入社を志望しました。貴社はビニルアセテート事業を中心にナンバーワン、オンリーワンのビジネスを展開するオリジナリティにあふれる企業だと存じます。貴社に入社した際には、独自の技術に新たな要素を組み込むことのできる人材へと成長し、世のため人のためにオリジナリティ溢れるビジネスを発想し貴社の成長に貢献できると考えております。 (177字)

クラレへの志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。

独自の製品群と技術(オリジナリティ)、世界No.1製品を各事業に保有、安定した業績、高い利益率、グローバル企業 、従業員満足度の高い企業、クラレグループの『使命』、ありたい姿

これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。

まとめ

以上にまとめましたが、クラレ株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?

オリジナリルな参入障壁の高い事業を展開する面白い企業ですね。

就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります!

今回、当記事で紹介した内容に加えて、就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう。

オファー型サイトの自己分析テストは秀逸!上手に活用して内定を勝ち取ろう!おすすめのサイトはこちら

当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。

この記事を書いた人

博士号を取得後、アカデミックから逃げるように総合化学に就職した研究者。会社では新規事業の開発に従事している。入社後、社会勉強のために証券アナリスト資格を取得し、分析力をいかすため当サイト『化学業界解剖計画』の運営を開始した。

Jagaをフォローする
企業研究
スポンサーリンク
Jagaをフォローする
化学業界解剖計画

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました