【志望動機例も掲載】決算データに基づく就活・転職に向けた宇部興産株式会社の企業研究ノート

企業研究

当サイトにおける宇部興産株式会社の評価は20.0/25点非常に優秀な就職先候補です。

  • 年収は国内平均440万円の1.6倍
  • 化学と建築資材の二本柱だが2022年度に建築資材事業は分離
  • ここ10年間での売上高と利益の伸びは観られない
  • 平均勤続年数は業界平均と同水準
  • 残業時間は他大手と比較しても少ない

当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!

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年収などの基礎データ

まず基本となるデータを掲載します。平均残業時間が他の総合化学よりも少ないのが目を引きます。

企業名宇部興産
代表者名泉原 雅人
単独従業員数3318
連結従業員数10897
上場区分東証1部
本社東京、山口
拠点山口、千葉、大阪、福岡
平均年収698.2万
平均年齢41.7歳
平均勤続年数16.0年
有給休暇の平均取得日数15.4日
月平均所定外労働時間15.1時間
主業種/サブ業種化学/総合化学

事業内容と主力製品について

宇部興産株式会社の事業内容は化学事業建築資材事業機械事業の3分野に大別されます。

化学事業

宇部興産の中核は化学事業であり、宇部興産HPでも『UBEグループの成長を牽引する』と位置付けられています。

いわゆる石油化学事業であるため、市況の影響を受けやすく売上高や利益の振れ幅が大きいことが課題として挙げられ、概況説明会においても化学事業の安定性向上を経営課題として取り上げていました

ナイロン原料である『カプロラクタム』ナイロン製品が主力製品と言えるでしょう。

また、医薬品などの高付加価値も取り扱っています。

建築資材事業

化学事業に次ぐ主力が意外や意外、建築資材事業です。(失礼ながら私も調査するまで知りませんでした。)

セメントから内装材・外装材左官材防水材までを取り扱っています。

ただ、2022年4月に当事業は三菱マテリアル株式会社のセメント事業と統合され、持ち分法適用関連会社となります。

簡単に解釈すると、建築資材事業は宇部興産と切り離されるため、より一層化学事業での稼ぎが大事になります。

機械事業

機械事業は宇部興産機械株式会社が中核を担っています。

ダイカストマシン射出成型機などを取り扱っているようですが、本業である化学とのシナジーは感じにくいなと感じてしまいます

セメントなどを取り扱う建築資材にも言えることですが、祖業が鉱業であるためのビジネスですね。

経営理念について

宇部興産株式会社HPより

創業の精神

「共存同栄」、「有限の鉱業から無限の工業へ」

経営理念

技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します

経営方針

「倫理」 高い倫理観を保ち、法令及び社会規範を遵守します
「安全と安心」 地球環境保全に努め、安全・安心なものづくりを行います
「品質」 お客様と社会の信頼に応える品質をお届けします
「人」 個性と多様性を尊重し、健康で働きやすい職場をつくります

大手企業らしい優等生な理念ですね。

セメントなどを取り扱う建築資材事業を分離して化学事業に集中する判断は創業精神の「有限の鉱業から無限の工業へ」と矛盾しません。

売上高および営業利益の分析

色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。

売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。

連結売上高・営業利益の分析

宇部興産株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。

『なんで10年も?』と思った方へ

宇部興産の平均勤続年数が15.9年(入社したら平均16年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!

2012年から2021年の間では売上高も利益も伸びているとは言えませんね。

もちろん売上高も利益も安定していると捉えることは出来ますが、利益率も特別高いとは言えないので就職・転職先としてはもう少し成長率を見て取れると心強いですね。

後で言及する研究開発費のほとんどを化学事業にかけていることを考慮すると、宇部興産HPでも言及されている通り、「化学事業が成長を牽引する」存在になれるかに注目です。

セグメント別売上高の分析

分析のコツ

セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。

宇部興産は化学事業と建築資材事業が柱であることが売上高からも明らかですね。

また、セグメント別営業利益に注目すると変動が大きな化学事業に比べて、建築資材事業は安定して推移していることがわかります。

これまでの宇部興産の安定化には建築資材事業が大きく寄与していたことが伺えます。

また、機械事業はここ5年の推移をみても規模をみても会社全体を牽引する存在になる可能性は低いと言って差し支えないでしょう。

このように建築資材事業はかなり影響が大きいので、2022年4月に建築資材事業を分離した後、宇部興産が会社としてどのように営業利益を稼いでいくか、化学事業を安定させるかに要注目です。

ただ、今のところ、化学事業をどのように成長させていくのかについて具体的なアイデアが見えてこないのは不安の種ですね。

懸念点

用途を特化したスペシャリティ化学に注力していくと言及されていますが、それだけで建築資材の穴を埋められるかは疑問です

  • 売上高と利益の伸びはないが安定している
  • 化学事業をどのように展開していくかが成長の鍵になる

研究開発費の推移

上図では宇部興産の研究開発費の推移を示しました。

市況に依らず、安定した研究開発費を計上していることは研究者視点ではありがたいことですね。

また、宇部興産の研究開発費のほとんどが化学事業に充てられていることからも化学事業の成長に期待したいところですね。

ちなみに、第114回期(2020.3)以前の会計では環境・エネルギーや医薬品セクターがありましたが、それぞれ建築資材と化学に含めて処理しています。

循環型社会構築への取り組み

分析のコツ

サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。

次の項目のプレスリリースでも紹介しましたが、廃プラスチックをガス化することで原料利用を可能とする独自技術 (EUP)を保有しているのは循環型社会の構築という観点からはかなりの強みだと思います。

今後、自社技術をどのようなビジネスに展開していくかが楽しみです。

また、2030年までに環境貢献型製品・技術の売上高を全体の50%以上とするとの目標を発表していました。

これは今後の宇部興産のビジネス展開に大きな影響を及ぼしそうです。

注目すべきプレスリリース3選(2019/01/01~2021/06/19)

分析のコツ

企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。

宇部興産株式会社の注目すべきプレスリリースは、

  1. 「アビガン®錠」の中間体供給について (2020/04/22)
  2. 産学官協働で希薄な濃度に対応可能なCO2回収・資源化プロセス確立に向けた技術開発と実用化を加速 (2020/06/19)
  3. 廃プラスチックのガス化ケミカルリサイクル推進に向けた協業の検討を開始 (2019/08/28)

Covid-19に対して効果があると話題になっていたアビガンの中間体を宇部興産が製造しているようです。

宇部興産の化学事業は医薬品事業も含んでおり、総合化学の取扱領域の広さがよくわかるプレスリリースです。

2と3は共にサステナビリティを意識したリリースです。

特に、宇部興産と荏原環境プラントが開発した廃プラスチックをガス化する技術(EUP)は昭和電工の商業プロセスに使用されているように、サステナ意識が高まる現代においては採用する会社が増えていきそうですね。

このような環境保全に有意義な特殊技術を持っている点はかなりポジティブに捉えていいと思います。

競合他社は?

カプロラクタムが主力ですが、国内競合といえば住友化学ですね。

総合化学大手の旭化成三井化学東ソー昭和電工三菱ケミカルホールディングスあたりも比較対象です。

宇部興産の強み、弱みは?

就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。

宇部興産の強み

化学事業とかけ離れた建築・機械事業を有しているのは多様性という観点で強みといえます。

しかし、宇部興産の一番注目すべき点は廃プラスチックをガス化する技術であるEUPです。サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルがトレンドであるため、これから数十年は強力なビジネスを展開できそうです。

環境保全ビジネスをどのように展開するかに注目です。

宇部興産の強み

独自技術による環境保全ビジネス、事業の多様性

宇部興産の弱み

建築資材事業を宇部興産本体から切り離すため、売上や営業利益がガクッと落ちることが予想されますが、宇部興産の化学事業がそこまで伸びるとは感じられません。

宇部興産の化学事業は市況に大きく影響されることも課題であり、以下に高利益路線にシフトするかが今後の宿題です。

さらに、海外売上高比率が30%と化学大手として低いのも弱みのひとつです。

宇部興産の弱み

海外売上高比率が低い、主力(化学)事業のボラティリティ

管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、

本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。  

例 サステナビリティ×企業理念

私は貴社のサステナビリティの対する取り組みに魅力を感じました。例えば、貴社のEUP技術はサーキュラーエコノミーを構築する上で鍵になると私は考えています。 貴社の有するこのような独自技術を展開・発展させることで環境保全に貢献する仕事ができると期待しております。また、地球環境と共存同栄する風土が醸成された貴社であれば、次なる環境貢献事業の立ち上げられる人材へと成長できると存じます。(190字)

宇部興産への志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。

創業の精神:「共存同栄」、「有限の鉱業から無限の工業へ」、経営理念、経営方針、グローバル企業、サステナビリティへの取り組み、独自の技術、化学事業への注力

これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。

まとめ

以上にまとめましたが、宇部興産株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?

環境保全に貢献できる独自技術を既に保有している点で、当該分野で他社よりも優位に立っていると言えます。

“環境保全”への意識が高い方には特におすすめの就職・転職先候補となりそうです。

さて、就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります。

今回、当記事で紹介した内容に加えて就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう。

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当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。

この記事を書いた人

博士号を取得後、アカデミックから逃げるように総合化学に就職した研究者。会社では新規事業の開発に従事している。入社後、社会勉強のために証券アナリスト資格を取得し、分析力をいかすため当サイト『化学業界解剖計画』の運営を開始した。

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