ご来訪ありがとうございます、『化学業界解剖計画』を運営する Jaga(@DrJagase)です。
合成繊維業界の大手の一角であるユニチカ株式会社の評価は16.5/25点。従業員満足度の高そうな企業ですが、売上の縮小が非常に気になります。
- 年収は国内平均440万円の1.3倍
- 利益率の高い高分子事業が収益の柱
- 赤字に陥ることはないが売上高の縮小が目立つ
- 平均勤続年数は業界平均よりも長い
- 有給取得日数は平均的だが残業時間は少ない
当サイトでは決算データをもとに”客観的”に企業を評価しています。一方で、企業の内情や口コミといった主観的情報も就活では重要です。OB訪問アプリを活用して賢く就活を進めましょう!
年収などの基礎データ
まず基本となるデータを掲載します。勤続年数の長さが目を引きます。残業時間も短く、従業員の満足度が高い企業であることが伺えます。
事業内容と主力製品について
ユニチカ株式会社の事業内容は高分子事業、機能資材事業、繊維事業の3分野に大別されます。
高分子事業
ユニチカの収益の大部分を担う高分子事業は、フィルム分野、樹脂分野、バイオマスプラスチック分野の3事業から構成されています。
当事業は世界トップシェアやオリジナリティの高い製品が特色であり、営業利益率が10%以上と素材企業では優れた数字を達成しています。
フィルム分野では世界シェア15%の食品用包装フィルムが主力製品です。世界初の同時2軸延伸フィルム技術がシェアの鍵です。
食品用包装フィルムはSDGsがトレンドである現代ではやり玉にあがることが多く、今後どのようにビジネスを進めていくかに要注目です。
樹脂分野ではグローバルニッチ戦略を推進しており、当事業製品『Uポリマー』はユニチカの独自ポリマーであるポリアリレートが使用されています。他にも植物由来原料を使用した『ゼコット』は注目しておいた方がいいでしょう。
バイオマスプラスチック分野は各事業に横断展開しています。当事業では乳酸を高分子化したポリ乳酸をベースとした『テラマック』を取り扱っています。
ユニチカは繊維大手の中でもバイオマス原料の活用で一歩リードしています。一方で、それが業績底上げに繋がっているとは言い難く、ビジネス展開が今後の課題です。
機能資材事業
機能資材事業はガラス繊維分野、活性炭繊維分野、ガラスビーズ分野、不織布分野、高機能多孔板分野、産業繊維分野と多くの事業で構成されています。この中でもガラスビーズは国内トップシェアです。
ユニチカは「機能資材メーカー」を目指しているようですが(上の画像参照)、営業利益率でも売上高でも高分子事業の方が優れています。
多くの事業をそろえていることは安定性をもたらす強みになりますが、弱い事業を持ち続けてしまう難点もあります。
更に、分野の広い割に利益がないことを鑑みると、事業整理が必要なのかと勘繰ってしまいます。
国内トップシェアのガラスビーズは道路標識や安全チョッキなどの反射材に使用させています。
他にも、不織布分野の『コットンスパンレース』と『ポリエステルスパンボンド』は国内1位のシェアを誇ります。
機能資材事業ではバイオマスプラスチックを不織布『ユニチカテラマック』として扱い、生分解性を生かした用途に展開しています。
繊維事業
ユニチカの祖業である繊維事業では衣料、産業用の素材から二次製品(ある程度製品として成型したもの)までを取り扱っています。
様々な繊維素材を提供するユニチカですが、単なる「繊維メーカー」からの脱却を試みており、当事業の利益率の低さを考慮すれば当然の流れかと思います。
ユニチカは高分子事業が収益の柱であり、機能資材事業の今後の伸長が全社業績の鍵となる
経営理念について
暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する
素材事業は社会を支える影のインフラであることを意識した経営理念です。ニッチな技術を主戦場とするユニチカらしい経営理念といえるでしょう。
売上高および営業利益の分析
色々な種類の利益(経常利益、純利益etc)がありますが、企業が本業で稼ぎだした利益は営業利益として表現されます。そして、営業利益の源泉となるのが売上高です。
売上高と営業利益を分析することで会社の成長性や安定性を評価しましょう。
連結売上高・営業利益の分析
ユニチカ株式会社の過去10年の売上高と営業利益をグラフ化したものをご覧ください。
ユニチカの平均勤続年数が18.1年(入社したら平均18年はお世話になる)であることを考慮すると、10年分の分析が決して多くはないことがわかると思います。詳細はこちらへ!
2012年から2021年にかけて右肩下がりに売上高が落ちています。売上高は(当たり前ですが)キャッシュや利益の源泉となる指標であり、これだけ一方的に縮小するのはかなり危険な状態と言えます。
素材産業や化学産業は景気に左右されやすいビジネスであるため、減収がやむを得ない場合もありますが、10年続いてしまうと実力と言わざるを得ないでしょう。
また、「選択と集中」により利益率の高い企業体質になっているのであれば減収も言い訳できますが、ユニチカは利益率の改善も見えません。
コロナ禍においても赤字に陥っていないところは評価できますが、これだけ売上高が縮小していると安定した企業とは言えません。
セグメント別の分析
セグメント別の売上高の成長に着目することで、企業がどの事業に力をいれようとしているのか、世の中が企業に何を求めているのかわかるのでこの分析手法はおすすめです。
ユニチカは2021年会計よりセグメントの分け方を変更しています。2020年以前と2021年が比較で気にないため、当記事では2021年のみを対象に分析しています。
セグメント別の売上高を見てみると、高分子事業が主力であるとわかります。次いで、繊維、機能資材という順に売上高が大きいです。
一方で、セグメント別利益に着目すると、売上高が大きかった繊維事業は赤字で利益貢献できていないことがわかります。コロナ禍の影響を受けているとはいえ、例年から利益率が非常に低い事業であったため、コロナを言い訳とすることはできません。
ユニチカの収益はほとんどを高分子事業が稼いでおり、高分子事業の一強が鮮明です。
同じくビニルアセテート頼りの同業他社クラレと異なり、ユニチカの高分子事業がクラレのビニルアセテート事業ほど他社に対して優位とは思えません。
繊維事業は利益率の改善が難しいため、機能資材事業をいかにして力強く成長させるかが今後の企業価値向上の鍵になります。
- 売上高が右肩下がりに縮小しており成長しているとは言えない
- コロナ禍でも赤字は回避できた
- 高分子事業一本足の事業構造でリスクヘッジできるかは気がかり
研究開発費の推移
上図ではユニチカの研究開発費の推移を示しました。研究開発費が右肩上がりなのは好感がもてます。研究開発費売上高が3%程度と化学業界としては平均的な値といえるでしょう。
セグメント別の開発費をみると繊維事業にはほとんど研究開発費を充てていないことがわかります。
全社として高分子事業と機能資材事業を強化していこうという狙いがはっきりとわかりますね。
循環型社会構築への取り組み
サステナビリティやカーボンニュートラルといったテーマはおそらく今後20年以上にわたって化学業界で最優先とされる事象になります。
企業がしっかりとこれらのテーマと向き合っているかは確実に確認しましょう。
繊維や樹脂を取り扱う企業に求められる環境保全技術は、
- 素材のケミカルリサイクル(サーキュラーエコノミーの構築)
- バイオマス由来原料の活用(カーボンニュートラルへの取り組み)
の2種類に大別されます。ユニチカは2のバイオマス原料の活用において世界レベルでみても進んだ企業といえます。事業紹介で言及した生分解性ポリ乳酸の活用に加え、ひまし油からモノマーを製造するなどバイオマス活用における隠れたリーディング企業です。
一方で、それらの事業が業績に貢献しているとは言えず、優れた技術をどのようにビジネスにつなげるかが今後の注目ポイントです。アジアよりも環境意識の高いヨーロッパに活路があるかもしれません。
ユニチカはバイオマス活用においてた他社にない技術を有している隠れたリーディング企業
注目すべきプレスリリース3選(2020/01/01~2021/08/07)
企業のだすプレスリリースは世間に対するポジティブなアピールです。つまり、企業として世間に褒めて欲しい、注目して欲しいところ。
プレスリリースをチェックして企業の動向を把握しましょう。
ユニチカ株式会社の注目すべきプレスリリースは、
- 植物由来PTT樹脂 デュポン™ソロナ®ポリマーを使用した特殊複重層糸パルパー® Made with Sorona®Polymerの開発について (2020/09/24)
- 6T ナイロンや 66 ナイロンの世界的な供給不足に対応した代替素材となるナイロン樹脂シリーズの開発および販売について (2021/03/17)
- カーボンニュートラル素材「CASTLON/キャストロン®」の仏アルケマグループとの包括的なリサイクルの取り組みについて (2021/03/16)
1と3はどちらも環境配慮型ビジネスに関するプレスリリースです。デュポンは言わずと知れた世界的企業ですがアルケマも世界大手の繊維素材企業です。環境配慮型ビジネスを単独で実施するのは難しいため、他社との協業が鍵になります。したがって、このような海外大手との協業は明るい話題と捉えていいでしょう。
2はユニチカの独自技術を生かしたプレスリリースです。
ユニチカの競合他社は?
ほかにも総合化学の旭化成が繊維事業を有しています。
ユニチカの強み、弱みは?
就職・転職活動において企業の特徴、特に強みと弱みをつかむのは非常に重要です。記事の内容を踏まえて、強みと弱みをおさらいしてみましょう。
ユニチカの強み
独自技術に裏付けされたニッチなビジネスを展開しているのがユニチカの強みです。
そのひとつとしてバイオマス原料の活用が挙げられます。ユニチカではひまし油や糖由来のポリマーを取り扱っており、カーボンニュートラルがスタンダードとなる今後はより伸びる分野と期待できます。
更に、プレスリリースにあるように、海外大手との協業を進めている点も強みのひとつといっていいでしょう。
独自技術によるニッチなビジネス、バイオマス原料の活用、海外大手との協業
ユニチカの弱み
売上高が縮小していることがユニチカ一番の課題であり弱みでしょう。高分子事業が収益のほとんどを稼いでいる一本足の状態も気になります。
さらに、海外売上高比率が20%と大手として低いのも弱みのひとつです。
売上高の縮小、高分子事業への依存度が高い、海外売上高比率が低い
管理人Jagaが志望動機を書くのであれば、、、
本項目はあくまでも参考例です。志望動機はご自身の言葉で書くようにしましょう。
私は貴社の環境に配慮したビジネスに強く惹かれたため入社を志望しました。貴社はひまし油や糖由来のポリ乳酸などバイオマス活用におけるリーディングカンパニーであると存じます。貴社に入社した際には、独自の技術に新たな要素を組み込むことのできる人材へと成長し、暮らしと技術を結ぶことで社会や環境、そして貴社の成長に貢献できると考えております。(166字)
ユニチカへの志望動機を書く上では以下のような言葉がキーワードになりそうです。
経営理念:暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する、ニッチなビジネス戦略、バイオマス原料活用、海外大手との協業(世界基準の技術開発)
これらのキーワードとあなたの思い、経験を組み合わせていけば魅力的な志望動機が書けるかと思います。
まとめ
以上にまとめましたが、ユニチカ株式会社の魅力や注目すべき動向は伝わりましたでしょうか?
バイオマス原料の活用に積極的な同社であれば、環境に配慮したビジネスを展開できそうです。
就職・転職活動で競合(ほかの就活生・転職希望者)に差をつけるには効率的、素早く企業の情報を収集することが重要になります!
今回、当記事で紹介した内容に加えて、就活サイトで情報を集め、インターンやOB・OG訪問を積極的に行いましょう。
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当記事が皆さんの就活・転職活動に有意義なものとなれば幸いです。
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